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弟くんさまへ  (LALAより)
IP: 123.230.16.91

ああ、なんでまた。
こんなときに、君は、なんであんなことを。

君が言わないでくれたら。
君がわたしに助けを求めたりなんかしなかったら。

わたしは、きっと。
違う未来を選んでいたのだろう。

ううん、それでも。
わたしを選んでくれてありがとう。
助けてくれて、ありがとう。



ふと横を見ると、いつも君がいた。
眠そうにしているか、寝ているか、のどちらかが日常で、
まともにノートをとっている時は、褒めてあげた。
ノートを見せてあげたり、貸してあげたり、
何をするのか教えてあげたり、それはわたしの日課になっていた。
わたしはそんなに頭が悪いわけではないけど、
寝ている君に追いつけないくらいじゃ、まだまだだと思った。

別に、好きとかじゃなくて、隣にいるのは当たり前だった。
強がりじゃなくって、本当にどうでもよかった。
だからあの子が好きだと聞いてふぅんと思って、
少しだけからかってやったっけね。
あの子と仲良くなったら、大切にしてやってと冗談を言った。
その度に機嫌悪そうにまた眠ってしまう君に、
悪いなあって謝っても、君が消えてしまうわけではなくて。
ふと目を離した隙に、君は視界から消えてしまうのに。
それも、どうでもいいと思った。

毎日毎日、同じことを繰り返す日々。
幾度も幾度も繰り返した、
おはよう。
ありがとう。
起きなよ。
ねぇ、ちょっと。
ノートとっておいた。
えへへ。
ごめんね。
なんでよ。
もう知らない。
嘘だよ。
うん、まあ、一応。
けっこう好きかも。
友達じゃないか。
許してよ。
別に怒ってないよ。
なんで。
なんだ。
今日も楽しかった。
またね。

隣にいて、とかは言わない。言えない。
だって、好きじゃないから。
君は、顔を真っ赤にして、男子のからかいを振り払う。
好きなんだろうなあって思うよ。
嬉しいなあって思うし、
そんな君を可愛いと思うし、かっこいいと思うし、
君が居ない日は考えたくないことがいっぱいある。

あれとか、これとか、それはどうしようかなとか。

わたしを助けてくれた君は、
わたしを選んでくれて、
わたしを選んでくれた君は、
わたしを助けてくれた。
だから、恩返しは、忘れあげること。
そう思ったのになあ。

わたしはもう、あの席には行かない。
前に立ったら右から三番目の、一番後ろ。
一番後ろからみたら、何かがおかしく変わってしまいそうだから。
天と地が引っくり返ってしまうくらい、
わたしの価値観が変わってしまうから。
だって、だって、そしたら、君の後ろ姿が見えてしまうから。
あんな淋しそうな背中、もう見たくない。

ああ、でもまだ君の隣に居たかったなあ。
そうしたら、重なっていたのに。
どこか遠くに、大切なものがあったんだよ。
わたしたちならさ、見つけられたよ、きっと。
でももういいんだ。
もっと大事なものを得たから。

また隣に居れたらいいなあ。
次の未来でも。
その先の未来でも。
隣で、君を見詰めていたいなあ。

これは恋ではないけど、君は大切な人だと思う。
どちらかと言えば、これは愛だと思う。
でも、それも違う。
全部全部取っ払って、それでも、わたしは。
君と居られて幸せでした。
わたしも君を、
選んだんだよ。

恥ずかしいなあ。
まったく。
恋人みたいなこと言わないでよ。
最後だからって、かっこつけちゃってさ。
ほんと、君らしくない。
お姫様のくせにさ。

いつか見せてあげるよ。
わたしの大切なもの。
だから、大丈夫だよ。もう忘れて。
さっきの約束、破っちゃうけど、
これからはわたしが全部覚えておくから。
君の代わりに、わたしが全部、教えてあげる。



一応けっこう好きな君は、わたしのことが好きらしい。

わたしはね……