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姫さまへ  (君を好きだった人より)
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姫?
姫に出会ったのは、
きっと晴れの日だったよ。
覚えていないから分からないけど、
そんな気がするんだ。

わたしたちはずっと、
ずっと一緒に居たのに、
結局こんな風に離れ離れになっちゃうんだね。

わたしは姫が好きだった。
出会ってからずっとじゃない。
出会ってからずっと先。
でも、絶対に好きだった。
それだけは本当だった。

わたしは素直じゃなかったけど、
そこそこかわいい所もあったじゃん。
なんで突然冷たくなったんだよ。
なんでだよ。
わたし、
待ってたのに。
探してたのに。
姫の馬鹿。阿呆。

ねえ姫?
何でこの世界はこんなに生きづらいんだろう。
何でこんなに、
わたしたちが生きづらいようになってるんだろ。
神様はさ、
わたしたちが辛い思いして、
しんどい顔して踏ん張ってる姿見んのがよっぽど好きなんだね。
わたしもうすんごい疲れたの。
疲れちゃったよ。
姫はどうなのか知らないけどさ。
姫は逃げたけど、
姫だって辛かったんでしょ?
世間は逃げた人にとことん優しいなんて、
どっかの本に書いてあったけど、
本当?
姫だって、
心のどっかでは何か辛い思いしてるんじゃないの?
ううん、しててね。
姫だって、
ここじゃない、
わたしの隣じゃないどっかで踏ん張っててよ。
そうじゃなきゃわたし、
やりきれないよ。
だから、
そういうことにさせてね。

姫に会いたいなあ。
姫はいつだって、
わたしの心を引っ掻き回した。
今もまだ。

あの時素直に、
行かないで
好きだよ
って言っておけばよかったなあ。

もう遅いけど。

姫に伝えに行きたい。

今からでもやり直せるよ。
何度でも。
わたしが絶対、
姫のこと幸せにするから。
姫のこと毎日抱き寄せて、
あったかい布団に二人で包まって、
優しいキスをして、
頭を撫でてあげたい。
たまには、
わたしのこともうんと甘やかしてね。
だからもう一回だけ、
やり直そう。

そう、言えたらなあ。

もう、壊れてしまった後だから、
今更だけど。

ずっと好きだったよ。
本当に。
きっとこれが愛なんだなあって、
ぼんやりと思っていた。

そして今考えても、
やっぱりあれは愛だった。

大切にしたかった。
じゃなくて、
大切にしてほしかったんだよ。
もっと。
温めてほしかったんだよ。
そうしたら、
わたしたちもっと遠くまで走って行けたのに。
わたしは君と、
姫と手を繋いで、
どこまででも走って行けた。
そんな気がしたよ。

だけどもう、
さようならしなくちゃね。

なんであの時、
ちゃんと手を掴んでおかなかったんだろう。
今こんなに苦しい思いをするなら、
掴んでおけばよかった。
一緒に、
もっと深いところまで落ちていけるように。
もっともっと暗い闇に。
わたしも姫と落ちてみたかったんだよ。
本当は。
いつだってわたしは嘘つきで、
君を傷つけてばかりだった。
でもこれは独りよがりの嘘じゃなくて、
君とどこかに行きたくてついた嘘だったよ。
君を引っ張って、
誰も知らない場所に行きたかった。
そうしなかったのはきっと。
君もわたしも、
物語の主人公なんかじゃなかったからだよ。
これで普通だったんだよ。
大丈夫だよ。
ちゃんとわたしたち、
普通だったんだよ。
ちゃんとわたしたち、
前を向いて歩いていけるよ。
だから、大丈夫。

お互いもう、
忘れて歩いていこう。
それが、普通の人生だよ。
何も特別じゃなかった、
わたしたちにぴったりの結末だと思わない?

特別になりたくて
なりきれなかった
わたしの恋人だった姫に伝える
最後の言葉

わたしたちに送る
最初で最後の約束


わたしは姫の、何だった?


姫は、
わたしの全てだったよ。


姫もそう思ってくれてたら嬉しいな。

さようなら。
これでもう、
ようやく何も気にしないで歩いていけるね。
これで幕が降ろせる。
わたしたちの物語に。
ありがとう。本当に。
あなたに出会えて、本当に幸せでした。

この世界はわたしには生きづらいけど、
君にとってもそうであると願って、
わたしは今日も必死に、
息をします。
胸が詰まって苦しいけど、
姫もきっと、
少しだけそんな気がするでしょう?

だから約束して下さい。

絶対に、
一人で落ちていかないって。
絶対に、
もう二度とわたしに会いに来ないって。

どういう意味か、分かるよね?

これでもう大丈夫。
わたしも姫も、
もう、何も心配しないで、
それぞれの道に踏み出そう。

本当にさよなら
わたしの愛した人

わたしの全てだったひと