結婚奮闘記

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冷たい人

そうして私と彼は出会いました。

彼がチーフである仕事をお手伝いしなければいけない他、他の場面でも彼と係わることがあるのをその時知りました。
彼を始めて見たとき「かっこいい人だな。」と思ったのですが、その時の私は自分のそういう気持ちよりも、「彼に迷惑をかけないように仕事をしなければ。」という気持ちでいっぱいでした。

それからの私は新しい職場に一生懸命慣れながら、彼をお手伝いしようとしました。
でも、彼の反応があまり良くないのです。
気を利かせたつもりで申し出たことも断られたり、用事があって話しかけても答えは返ってくるものの、顔を向けてくれなかったり。
最初は「どうしてなんだろう。何か私が悪いのかな。」と悩んでいた私も、そんな状態が続くと彼のことを「冷たい失礼な人だ。」と思うようになっていました。
話しかけても良い返事が返ってこないことが怖くて、いつしかあまり話しかけることもなくなりました。

そして半年がたった頃、私が学校の代表で授業をしなければならない日が来ました。
少し職場には慣れてきたとはいえ、まだその職場に来て半年くらい。
うまくいくのかとにかく不安で、前日はあんまり眠れず、その日も朝から緊張して落ち着かない気分でした。
いよいよ授業の時間。
まわりの先生方がみんな「頑張ってね。」って言ってくれます。
何とかそれに笑顔で応え、教室に向かおうと歩いていたとき、廊下の向こうから彼が歩いてくるのが分かりました。

何だかイヤだな。
どうせ私が授業することなんて忘れてるんだろうな。

そう思って下を向いてすれ違おうとしたとき、不意に声をかけられました。

「気楽にやってください。誰だって緊張するし失敗して当然だから。」

それだけ言って彼は通り過ぎて行きました。

私は話しかけられたたことにびっくりして、思わず一瞬その場で立ちつくしてしまいました。
そしてその時思いました。

あ、私失敗していいんだ。
それで人生が終わっちゃうわけでも何でもないんだ。

身体の力がすっと抜けて楽になりました。
その日初めてちゃんと呼吸ができた気がしました。

授業は驚くほど落ち着いてでき、私は走って教室から戻りました。
落ち着かせてくれた彼にお礼を言いたい気持ちでした。
でも、彼は私にまた目を止めることもなく、何事もなかったように仕事をしています。
それはいつもの「冷たい人」な彼でした。

でも、私の中で「冷たい人」だった彼の定義がちょっとだけ変化した日でした。

あげはの結婚体験談1月14日



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