結婚奮闘記

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二人の距離

その出来事があってから、少しだけ彼のことが怖くなくなりました。
まだ、あまり話しかけることはできなかったけれど、何となく「冷たく感じるけど、無神経な人じゃないな。」と思うようになっていました。

そんなある日、私が仕事を終えて遅い時間に職員室に戻ると、そこには彼ともう一人の先生だけが残っていました。
その日は金曜日で、仕事のプレッシャーから解放されるうれしさから、私は何の気なしに近くの席だった彼に話しかけたのです。
彼は相変わらず顔をこちらに向けませんでしたが、返事はしてくれました。
時間にして20分くらい。
それほど話したのはそれが初めてです。

その時、もう一人の先生が好意から、「二人とも、話すならどこかご飯でも行ったらどう?」と声をかけてきました。
私はその提案にびっくりして、何だか急にしどろもどろになってしまいました。
彼は、意に介さない様子で上手に言い訳をし、結局三人とも帰ることになりました。

帰り道。
さっきまでの彼の様子に「あ、やっぱり。私のことなんて気にもとめてないんだろうな。」という気持ちと同時に、どこか寂しい気持ちがあることに気づきました。
でも、それが「好き」という気持ちなのかは、自分にもまだ分かりませんでした。


その次の週、彼は出張に行かなければならない日がありました。
その日に彼から引き継いで私がやっておかなければならない仕事があったのですが、気づくと彼は出かけたあとでした。
「あの仕事どうするんだろう。」と思っていると、私の机の上に一枚の紙が置いてあるのが目にとまりました。

それはおどろくほど綺麗に、そして丁寧に書かれた彼からの伝言でした。

私はそれが何だか嬉しくて、その仕事を終えた後、同じように伝言を書き、彼の机の上にのせました。
そして彼からの綺麗で丁寧な伝言を捨てるのがしのびなくて、自分の机の中にそっとしまいました。


今考えると、こうして少しずつ少しずつ、二人の距離は縮まっていたのです。

あげはの結婚体験談1月14日



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